陽極酸化処理とは?
陽極酸化処理とは、金属を陽極として電解質溶液中で通電した時に金属表面に生じる酸化皮膜をつくることをいいます。
チタンには不働態という酸化膜があるのですが、炭酸水素ナトリウムの溶液に金属をひたして電気を流すと、金属に溶液中の酸素が金属に付着して、酸化被膜が厚くなります。
炭酸水素ナトリウムは、重曹や、コーラなどでも代用できるようです。
今回は、陽極酸化処理についてご紹介したいとおもいます。
チタンに陽極酸化処理を行うメリットは?
チタンは軽く、生体親和性が高いことから、インプラントに使われています。
歯科でチタンというと、主にインプラント体とアバットメントに使われますが、歯科の世界では、陽極酸化処理は主にアバットメントに使われます。


日経新聞のサイトに載っていましたが、最近ではアップルがiPodに陽極酸化処理を施して、カラー展開をしています。
金属に陽極酸化処理を施すと、金属はブラウン・ブルー・グリーン・ゴールド・ピンクに変色します。
アバットメントは主にゴールドにすることが多いのですが、これは、ジルコニアやガラスセラミックの歯を上にかぶせた時、透明色のあるジルコニアやセラミックは、アバットメントの色を透かしてしまい、灰色っぽく色が抜けてしまいます。
この色が抜けてしまう現象を防ぐために、アバットメントはゴールドにすることが多いです。
陽極酸化処理と窒化処理・メッキの違いは?
陽極酸化処理は電流を流すことで溶液中の酸素を金属に付着させて酸化被膜をつくる処理ですが、窒化処理とメッキはどう違うのでしょうか。
窒化処理は金属に窒素を染み込ませる処理で、金属の強度を上げる処理、メッキは金属に異種金属を張り付ける処理です。


余談ですが、奈良の大仏は表面にメッキ処理がされています。
水銀に金粉を含ませて大仏に塗り、水銀だけを熱で蒸発させて金だけを残しているそうです。
色を変えるだけではない、陽極酸化処理のもう一つのメリットは?
チタンには、不働態という、チタン特有の酸化被膜があります。
チタンは酸素を強烈に呼び寄せるので、錆びてしまう前にこの不働態を形成するのですが、この、チタンの酸化被膜には生体親和性を向上させる効果があります。
ネットで論文が手軽に読めるので、興味がある方は是非みていただくといいとおもいます。
軽金属 第58巻第11号(2008)骨適合性向上を目的としたチタン材料の表面処理 成島尚之 参照
陽極酸化処理は審美歯科にも求められ、今後は対応可能な技工所、歯科医院も増えていくでしょう!!
金属を陽極として電解質溶液中で通電した時に、金属表面に生じる酸化皮膜を生成させる陽極酸化処理ですが、色がゴールドになることで、ジルコニアやガラスセラミックを用いた審美歯科にも対応しやすくなること、不働態が厚くなることで生体親和性が上がることから、今後この処理を望まれることが多くなっていくと思われます。
また、この不働態被膜は250nm程度と、適合にも影響しないので、歯科技工所のみなさんも是非積極的に導入されてはいかがでしょうか?
ちなみに、1㎚は100万分の1ミリです。